九州焼酎島

2016/08/08

ゆったり焼酎日和 | 第21回 うまい焼酎、まずい焼酎 Part2

本格焼酎好きな人は多くが、普段大切にしている銘柄を持っている。いつもの晩酌で味わうスタンダードな銘柄であり、旧知の友と一杯傾けるために大事に保管している銘柄である。

もちろん「うまい」銘柄を大切にする。焼酎の味わいはそれぞれ違うので、人によって、うまさの価値観も変わってくる。

芋や麦、米など原料によっても、好き好きがある。麹の違いを楽しむ人もいる。一般的には黒麹が濃厚、白麹はすっきり、黄麹がフルーティーと言われているが、作り方によってもさまざまだ。

芋臭くない焼酎が好きな人は、「魔王」(白玉醸造)のようなすっきり、ドライな焼酎がうまいと言うだろう。逆に、甘さと香りのバランス重視の方は、森伊蔵(森伊蔵酒造)や村尾(村尾酒造)を選ぶだろう。

味を客観的に機械で数値化する「味覚センサー」を開発した、九州大学の都甲潔教授は、うまいと思う焼酎に「黒霧島」(霧島酒造)と「明るい農村」(霧島町蒸溜所)をあげる。なぜなら、「味に特長がないから」だとか。いずれの焼酎も、味覚センサーで調べたところ、柔らかすぎず、芳醇すぎず、ドライすぎない、とても平均的な値だったという。

何度も繰り返すが、「うまい焼酎」は人それぞれ違う。芋焼酎の「海」で知られる大海酒造や「甕雫」で有名な京屋酒造など、自社の各焼酎を味わいの違いを「味の地図」で紹介している焼酎蔵もある。自分の好みの味を探る上で、参考になるだろう。

では、「まずい焼酎」ってあるのか。例えば、昔の芋焼酎はとっても芋臭かったから、「まずい」と敬遠する人も多かった。だが、最近は品質の確かな芋を使い、蒸留技術も向上したため、昔のような強烈な香りの芋焼酎はなくなった。だから、鹿児島の焼酎蔵の杜氏に聞くと「今の時代に『この焼酎だけは飲めない』というほど、まずい焼酎はない」と言う。

九州焼酎島で「飲めないほど、まずい焼酎を知ってますか?」と焼酎関係者に聞いてまわっても、具体的な銘柄は出てこなかった。

まずい焼酎は本当になくなったのか? 焼酎蔵の努力のおかげで、うまい焼酎を探すよりも、まずい焼酎を探すほうが、難しい時代になっているのである。

(渡邊精二)


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