九州焼酎島

2015/12/01

ゆったり焼酎日和 | 第4回 焼酎の臭い

昔の焼酎は臭かった。特に芋焼酎は。

 

僕も幼いころ、親父が芋焼酎を飲んでいて、強烈な臭いに鼻をつまんだものだ。当時、親父が好きだったのが「さつま白波」(鹿児島・薩摩酒造)。暑い夏でも関係なく、1年中、お湯割りだった。臭うんだよね、お湯割りだと。

 

でも、最近の焼酎は臭くない。仕込みの時に芋を選別して、粗悪なものを使わなくなったからだ。蒸留技術、ろ過技術の進歩も大きい。臭みの元となる不純物を取り除けるようになった。臭みをなくして、すっきりと飲みやすくなる、減圧蒸留が流行って、焼酎人口は一気に増えた。

 

でも、昔から焼酎党の人は「物足りない」と言う。「あの臭さが懐かしい」と。

 

ある時、飲み会で一緒になった「焼酎先生」で知られ、鹿児島大学で教えていた鮫島吉広先生に聞いてみた。「焼酎メーカーはもう臭い焼酎を造らないんですかね?」。先生は「造ろうと思えば造れるけど、昔の焼酎を今飲んでもおいしくないよ」。

 

ある焼酎メーカーの社長にも訪ねた。「よく聞かれるんだけど、臭い焼酎を造ろうと思ったら簡単だよ。でも、売れないね。おいしくないもの」と教えてくれた。

 

今や懐かしい強烈な芋臭さ。そんな思い出に浸りながら、口に含んだ今の焼酎は、確かにうまい。

 

(渡邊精二)


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