九州焼酎島

2015/11/24

ゆったり焼酎日和 | 第3回 鹿児島藩

江戸幕末期の日本史が好きな方は多い。僕も、その1人である。

 

幕末のロマンに思いをはせるとき、「薩摩藩」は外せない。西郷隆盛、大久保利通と日本の新しい時代を切り開いていった多くの偉人が、薩摩の地で誕生した。

 

世の幕末好きは「薩摩藩」という地名に特別な思いを持っているが、明治時代の鹿児島の正式名称が「鹿児島藩」だったことを知る人は多くない。僕も「鹿児島藩」という銘柄の芋焼酎を手に取るまでは、知らなかった。

 

「鹿児島藩」は鹿児島・三和酒造で造られている。黒麹仕込み白麹仕込みの2種類。僕は白麹仕込みを試してみた。正直なところ、たいして期待していなかったのだが、見事に期待を裏切ってくれた。

 

お湯割りにしてみると、甘い香りがぷ~んと鼻をつく。口に含むと、芋の甘さがいっぱいに広がる。実は前日の晩、プレミアムと言われる焼酎を飲んだのだが、一緒に飲んだ妻も「鹿児島藩の方がうまい」と喜んでいた。僕もそう思った。

 

三和酒造の関係者に聞くと、鹿児島藩の芋は酒蔵に近い南薩摩地方の黄金千貫を使い、地中に埋め込んだカメ壷で寝かせている。蒸留法が珍しい。杉の木で製造した木樽蒸留機で、蒸留酒に仕上げている。ステンレスの蒸留機と比べて、しっかりした味ながらほどよい滑らかな口当たりになるという。

 

小さな蔵だから、生産量は少ない。個人的には、あまり売れすぎて手に入らなくなると困るのだが、おいしい酒を真面目に造っている蔵は応援したい。コラムでもどんどん取り上げたい。

 

世の中には、名をほとんど知られていない、うまい焼酎がある。鹿児島藩に出会って以来、聞いたことのない銘柄に出会うと、ワクワクするのだ。

 

(渡邊精二)


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