九州焼酎島

焼酎人
上山海音さん

「売る人」たちが、今惚れ込んでいる焼酎を語る。
~ カフェバー「Chez papa」店主 上山海音さん ~

本格焼酎をお客に振る舞う人たちがいる。
飲食店や酒屋。彼ら、彼女らは、味に敏感だ。ブランドにとらわれず、自らがおいしいと思える焼酎を常に探し求めている。
「売る人」たちが、今惚れ込んでいる焼酎を語る。

お酒はおいしければいい。

Chez papa(シェーパパ)の常連の半分ぐらいは、焼酎を飲まれますね。普通、バーと言ったら洋酒にこだわるところも多いですけれど、団体のお客様が入った時などは、どうしても焼酎党の方がおられます。せめて来店される8割のお客様には満足してもらいたいので、焼酎を置いています。100%の満足度は、さすがに難しいですからね。

うちのバーは、いろんな方が来て、お酒を飲んで、おしゃべりして、楽しんでもらえたらいいんです。うちのオヤジ(漫画クッキングパパ作者のうえやまとちさん)も同じ考えなんですが、お酒はおいしければいい。何がおいしいかは人それぞれだから、自分の好きな酒を、好きな仲間と飲んで、楽しく語り合える場であれば、それでいいと思うんです。

だから、バーだけど、洋酒だけにこだわりません。お客様のリクエストがあれば、どんな焼酎でも取り寄せます。浅く、広く、どんなお酒でも置いていきます。芋焼酎の「黒若潮」(若潮酒造)、「三岳」(三岳酒造)や黒糖焼酎の「れんと」(奄美大島開運酒造)は、おいしいからとお客様の要望があって並べています。長期熟成米焼酎の「メローコヅル」(小正醸造)は、ラベルのデザインをぱっと見て、バーの雰囲気に合うな、と。41度とアルコール度数が高いし、舐めたらおいしい。ウイスキー好きの方の口にも合うと思い、購入しました。

結局は、オヤジの血を引いているということでしょうね。

オヤジが「クッキングパパ」を描いているから、「シェーパパ」の店名はその関連かとよく言われるんですけど、全く関係ないんですよ。7年前に前オーナーが体調を崩されて、常連で来ていた僕が引き継ぐことになったんです。前のオーナーが「パパさん、パパさん」と言われていたので、僕もそういう存在になれたらいいな、と思って、名前も変えずに続けているんです。

正直なところ、絵を描いたり、料理を作ったりするのは、オヤジの印象がくっついてくるので、昔は避けている自分がいました。幼いころ、絵を一生懸命に描いて、満足できるものができても、大人は「お父さんが絵が上手だから、あなたも上手なのね」と。そう言われると、幼心にちょっと面白くない。料理は好きなんですが、料理を仕事をしようとも思わなかったです。

僕はギターが好きだったので、ギターをつくるクラフト職人になったんです。でも、実はそこにも、オヤジの趣味が入っていて。音楽が好きなので、ギターを弾くんです。今はオヤジと2人で「みとちお」という名前のバンドを組んで、ライブをやったりしています。結局は、オヤジの血を引いているということでしょうね。先ほど「こだわりすぎない」という話をしましたけど、オヤジもそういう性格ですからね。

家族4人がそろえば、宴会になります。

クッキングパパの荒岩家には、長男まことと10歳下の長女みゆきが登場するんですが、実は上山家も長男の僕と6歳下の妹の2人兄弟なんです。わが家で起こった出来事が漫画のネタになることもあるんですよね。でも、気にはなりません。ネタになったとしても、クッキングパパはあくまでオヤジの想像上の世界ですから。オヤジが自らの思う「かっこいい男、かっこいいお父さん」の世界を30年にわたって、創り上げているんだと、理解してますので。

上山家も、家族の仲は良いですよ。僕も妹も、今は結婚して家族はいますけど、家族4人がそろえば、宴会になります。僕が酒を準備して、オヤジは肉料理を作ります。母は畑を持っているから野菜を出し、妹はお菓子を手作りします。4人で宴会メニューが出来上がるんです。宴会の時にどんな種類の酒を飲むかって? 何でも飲みますよ。僕は何が好きかって、酒が好きなので。

「飲みにケーション」

焼酎は宴会にはいいですよね。最もリーズナブルで酔っぱらえる酒だと思うので、1本用意しておけば、みんなでワイワイ飲める。焼酎の良さって、安くて、おいしくて、芋、麦、米などの味のバリエーションが多いことなんでしょうね。だから、常連の多くが焼酎を頼むのかな。

うちのお店の常連さんに、若い方は少ないですね。若者の酒離れって、実感します。コミュニケーションの問題じゃないのかな。「飲みにケーション」という言葉がありましたけど、直接会って、お酒を飲みながら腹を割って話すような機会が、世の中でなくなっているのかな、と感じます。

お酒って、心にため込んだ嫌なことを洗い流してくれると思うんです。

お酒って、心にため込んだ嫌なことを洗い流してくれると思うんです。悪いことがあっても、飲んでいるうちに、次の日は良いことがあるかもしれない、なんて感じたりするわけです。心の栄養みたいなものです。

僕も仕事が終わって帰宅したら、心の栄養を補給しますよ。焼酎だったら、最近は黒若潮かな。甘みなどのうまさが、わかりやすい酒です。ダラダラしながら酔う時間はないんで、ストレートでクイッと飲み干します。明日は、良いことあるかもしれないな、なんて思いながら。


プロフィール

上山海音さん

1979年、福岡市で生まれ、福岡県久山町で育つ。「お酒とくつろぎと音楽」を提供する「Chez papa」は、福岡県福津市中央6-8-5ウインドブレイク1F。JR福間駅から徒歩5分。定期的にライブを開き、生演奏を聞きながら200種類を超える酒を楽しめる。