九州焼酎島

焼酎人
ライブ前は芋焼酎で気持ちを高めます

「呑む人」たちが、たくさんの「好き」を語る。
~ ジャズボーカリスト 西田千穂(にしだ・ちほ)さん ~

毎日の晩酌は本格焼酎という人たちがいる。選ぶ理由はさまざまだ。
甘い香りに惹かれる人、お湯割り、水割りと気分で楽しみたい人、糖分ゼロで健康に気を使う人。
焼酎を「呑む人」たちが、たくさんの「好き」を語る。

焼酎は”きつけ薬”

“きつけ薬”と言ったら良いのでしょうか。ジャズのライブ前には、メンバーと一緒にお酒を飲みます。気持ちよくなって、緊張感からほどよく開放され、楽器演奏者との一体感も高まります。「緊張」と「開放」という両極が、とてもいいバランスになって本番に臨めるんです。

鹿児島出身ですからもちろん、ライブ前のお酒は、芋焼酎です。濃い目の水割りでいただきます。三岳をよく飲んでいますね。冬場の寒い時期は、黒伊佐錦のお湯割りで気持ちを高めたりもします。ジャズのコンサートを開くお店には、九州はもちろん、東京でも、たいていは芋焼酎が置いてあるんですよ。

ジャズボーカリストとしての道

私、ジャズの世界に入った年齢が遅かったんです。実は8年間も通った熊本大学で、ジャズボーカリストとしての道が始まりまして(笑)。26歳の時です。最後の8年生で、卒業のために必ず取らないといけないゼミがあったことが、きっかけです。演奏論なんですが、人前でパフォーマンスをしなければならない。楽器はできないから、歌うしかない。ちょうどラジオのジャズ番組を好きで聴いていたので、ジャズ研究会(ジャズ研)に入って、今につながるんです。

もともと劇作家のつかこうへいさんが好きで、大学時代に劇団に入っていました。どっぷり浸かりすぎて、留年してしまう原因になったんですけど(笑)。人前で表現をしてみたいなあ、とは思っていたわけです。でも、ジャズ研の演奏会や仲間とのセッションでは、なかなか上手にいかない。それが悔しくて、ジャズの勉強をするうちに、魅力にハマってしまったんです。

美しいジャズのお供として、焼酎を

ジャズは美しい曲が多い。曲の良さに、これまで引っ張られてきていると思うんです。そして知れば、知るほど、まだまだ知りたい、もっとうまく歌えるようになりたい。そんな感情が湧き上がってくるんです。今も気持ちは変わりません。そのジャズのお伴として、焼酎があります。

自己紹介代わり

「焼酎」の存在は、ライブでお客さんとのコミュニケーションにも役立っているんですよ。曲が始まる前に私の好きな歌の話をするんですが、その直前に、三岳とか、黒伊佐錦とか、宝山とか、私のお気に入りの焼酎を紹介するんです。すると、シーンとした会場の雰囲気がほんわかして、お客さんとの距離がぐっと近くなり、良いコンサートになるんですよね。たぶん、焼酎を飲んだことのある人が、私に親近感を抱いてくれるからだと思うんです。

焼酎の話は、鹿児島人の私の自己紹介代わりにもなります。ライブが終わった後に、東京のお客さんから「鹿児島から来たの?」なんて話しかけられ、会話のきっかけにもなるんです。焼酎はライブ前の緊張も解いてくれるし、お客さんとの距離も近づけてくれる。本当に助かっています。

やっぱり芋焼酎が一番肌に合う

ただ、ジャズって、焼酎と言うよりは、ウイスキーなど洋酒のイメージかもしれませんね。昔はコンサート前に、バーボンをショットで飲んだりもしました。いろんなお酒を楽しんできましたけど、やっぱり私は鹿児島の人だから、芋焼酎が一番肌に合ったんです。

私、生まれ故郷が大好き。最近、焼酎の芋のにおいは、鹿児島人としての自分のアイデンティティになっているんだなと感じます。大げさな話ではないんですよ。東京の公演などで地元を離れるとき、ちょっとした心細さを焼酎の芋の香りが和らげてくれるんです。芋焼酎は、私にとって、勇気の種の一つなんです。

 


プロフィール

西田千穂(にしだ・ちほ)さん

1978年生まれ。鹿児島市出身。熊本大学文学部在学中にジャズボーカルの道に入る。現在は鹿児島を拠点に、九州、東京で年間70~80回のコンサートを開催。城山観光ホテルのラウンジ・バー「カサブランカ」でも歌を披露している。 「いつかCDに入れたい」と、心の中で大切に温めている曲は「My One And Only Love」。