九州焼酎島

焼酎人
坂口光一(さかぐち・こういち)さん

「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。
~ Sho-Chuプロジェクト代表理事 坂口光一(さかぐち・こういち)さん ~

大好きな本格焼酎の良さを、たくさんの人に知ってもらいたい、と活動する人たちがいる。
世界に向けて焼酎を発信する人。大学で焼酎を学び、同世代の女性に広めている人。
こだわりの焼酎を造っている人。そんな「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。

目標は、焼酎王国九州で「世界蒸留酒オリンピック」を開くこと

僕の目標はね、東京五輪が開催される2020年に、焼酎王国九州で「世界蒸留酒オリンピック」を開くことなんだよね。 焼酎を通して、九州を世界に発信したいんだ。

九州は「世界最大の蒸留酒地域」

以前、大学で中国などから来た留学生と話していると、「これが九州だ」というインパクトのあるものがなかったことに気がついた。 北海道なら「雪」のイメージなんよ、中国人にとって。東京なら「東京タワー」とかいっぱいある。でも、「九州とは」の説明は、 母国の家族や友人にしずらかったみたい。

そこで目をつけたのが、焼酎なわけなんよ。本格焼酎(乙類)の93・5%は九州で造られているって知ってる?  酒蔵焼酎蔵は330カ所を超えている。同じ蒸留酒のスコッチが造られている英スコットランド地方のシングルモルト蒸溜所が100カ所余りだから、 九州は「世界最大の蒸留酒地域」と言っていい。

焼酎の知名度は欧米では極めて低い

でも、焼酎の知名度は欧米では極めて低いね。海外に売りだそうとしている蔵元も出てきているけど、苦戦しているよ。 日本といえば「SAKE(日本酒)」が有名。焼酎は、米国では「韓国焼酎(ソジュ)」の日本版として、売られていることもある。寂しい話だよね。 だから、僕は焼酎を本当の意味で世界デビューさせようと、2013年7月に「Sho-Chuプロジェクト」を立ち上げたんだ。 今は、九州大学と九州各地の15蔵元が連携して組織をつくっている。

ニューヨークで試飲会を開いたけど、現地の飲食関係者の73%は焼酎を知らなかった。一般の人ならゼロに近いと思うよ。 外国人の頭の中で、蒸留酒といえば、スコッチ、バーボン、ウォッカぐらい。やはり「Sho-Chu」という言葉が認知されないといけないと思ったよ。

いくら各蔵元が個別銘柄について熱く語っても、外国人の頭の中を素通りさせられるするだけ。 芋、麦、米などの原料別のカテゴリーをアピールするんじゃない。芋焼酎、麦焼酎、米焼酎などを一括りにして、 九州の特産品の「焼酎」として売り込むべきなんだ、と再認識したよ。

原料や銘柄でなく「焼酎」という言葉をアピール

だからプロジェクトでは、原料や銘柄でなく「焼酎」という言葉をアピールしている。 「焼酎スタイル」「焼酎タイム」といったファッション感覚で、外国人をよんでいきたいと思ってる。スコッチならスコットランド、バーボンなら ケンタッキーと酒類名と産地がセットで知られているでしょう。だから、焼酎といえば九州という統一がかかせない。焼酎のブランド化と九州の ブランド化を表裏一体で考えないと。焼酎を九州の代名詞にできるかどうかは、焼酎のマーケティングとして重要だよ。

ただ、ここまで活動してきて、問題意識も変わってきたんよね。国内の若者も含めて、焼酎文化を建てなおさないといけないと。 首都圏の女性を対象にした「九州から連想するキーワード」のアンケートで、1位は温泉、2位はラーメン。焼酎は10位にも入ってなかったんだよね。 ここで上位にこないと、国内でも焼酎の将来はないんじゃないかと思ってね。

焼酎を通じていろんな出会いが生まれる。

でも、最近の学生は、酒を飲まんのよね。飲み会があっても、参加しない子も多いんだよ。外に出ようとしない。飲み会って、 コミュニケーションの場づくりだよね。日本酒はカッコつけて静かに飲みたいけど、焼酎はみんなでワイワイできるじゃない。だからそんなことを考えて、 「焼酎カレッジ」を始めたんだ。毎回いろんなゲスト講師を呼んで、受講生は焼酎を飲みながら話を聞く。後半は、参加者と「焼酎バル」。いわゆる飲み会だね。 焼酎を通じていろんな出会いが生まれる。

ゲストには、長崎・壱岐の玄海酒造の山内賢明会長や、宮崎の京屋酒造の渡邊眞一郎社長に来てもらった。 麦焼酎発祥の地、壱岐焼酎の麦のふくよかな香りはよかったな~。京屋さんの芋焼酎「甕雫」は口当たりがよくて、すいすい飲んでしまうね。 それぞれの持ち味を楽しみながら、ほどよく酔ってしまったよ。

「焼酎先生」こと、鹿児島大の鮫島吉廣客員教授の焼酎文化の話も面白かった。薩摩酒造の常務取締役製造部長まで務められた方。 やはり、造っている人でないと「うんちく」は語れんよね。僕はただ飲むだけだよ。芋焼酎、さつま白波の「明治の正中」も会場に並ばせてもらった。 明治期までの製造方法を再現したもので、濃厚な香りがいいね。

焼酎オタクの米国人とか、ゲストは面白いんで、焼酎カレッジに参加してみんね。たくさんのうまい焼酎が並んでいるから。 その時は「乾杯、しょうちゅう!しょうちゅう、乾杯!」で。


プロフィール

坂口光一(さかぐち・こういち)さん

1953年生まれ。福岡県大牟田市出身。九州大学大学院統合新領域学府教授。九州経済調査会で地域の産業、経済の分析や計画策定に従事。 96年から九州大学。感性を生かしたコトづくり、モノづくり、学びづくりが、教育研究のテーマ。