九州焼酎島

焼酎島,麦焼酎, つくし,西吉田酒造,福岡
2016/12/26

蔵元探訪 | 西吉田酒造(福岡県筑後市)

2016年の福岡国税局鑑評会で大賞、

麦焼酎の「つくし黒ラベル」

福岡の清酒どころとして知られる筑後地方で、明治時代から焼酎専業の蔵として蒸留酒づくりに励む西吉田酒造。麦焼酎「つくし黒ラベル」は、2016年の福岡国税局(福岡、佐賀、長崎)酒類鑑評会の本格焼酎部門で、第1位の大賞に輝いている。

飲んでみると、麦の甘みが口に広がり、鼻に抜ける余韻も心地よい。お湯割りでも、水割りでもうまい。そして食事にも合う。正直、すっかり気に入った。

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

つくしの黒ラベルと白ラベル。黒は常圧蒸留、白は減圧蒸留で造られている。

 

焼酎で15分語って、女性を口説きたい

7代目の吉田元彦社長が言う、つくしのコンセプトは「焼酎で15分間語りたい」。きっかけは、20年ほど前の電車内でのこと。社長が座席に座っていると一組の男女が乗ってきた。男性は女性をしきりと食事に誘っていたという。ワインや日本酒の大吟醸酒など、男性は酒のことを語りながら、口説き出した。中々話題に乗ってこない女性に対し、ついに「普段は何を飲んでるの?」と質問。返ってきた答えは「焼酎よ」だった。男性は絶句、そのまま会話は終わって電車を降りて行ってしまった。

「焼酎では口説けないのかぁ」。吉田社長はそう思い、「だったら、口説ける焼酎をつくってやろうじゃないか」と、特別なお酒としての焼酎造りにこだわるようになったという。

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

「蔵人の写真って、なぜか腕組みしてますよね」と笑う吉田社長

吉田社長は明治大学政治経済学部を卒業後、食品卸大手の国分(株)に勤務。1990年代後半に帰郷し、蔵の経営に関わるようになった。当時は「本当に焼酎がうれなかったんです」と振り返る。食品卸の会社にいたから、問屋さんにお願いしようと思い、営業同行で東京都内の酒屋さんを1000軒くらい回ったのに、注文はほとんどなし。「つらい時代でした」と苦笑いする。

会社存続の危機に苦肉の策、

常圧蒸留の「つくし」がヒット!

この後、焼酎ブームがくるなんて思いもよらない時期。会社存続の危機だった。ある営業担当者の一言が転機になる。「常圧蒸留の焼酎がうまいのでは。商品をつくりましょうよ」

当時は、大分麦焼酎に代表される、あっさり系の減圧蒸留の麦焼酎が主流。西吉田酒造の焼酎は市場の中に埋もれてしまっていた。1ヶ月ほど説得され、苦肉の策で常圧蒸留の「つくし」に挑戦。それが、「突然、売れだしたんです。しかも、品薄になるほどに」。

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

「つくし黒ラベル」を造る常圧蒸留機

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

減圧蒸留機は縦に長い。つくし白ラベルが造られる。

世界的ソムリエ、田崎真也さんも「つくし」を紹介

売れた要因はさまざまあろう。後に知ったのは、世界的ソムリエの田崎真也さんが紹介してくれていた、ということだった。「今思うと、東京・青山などオシャレな街から注文が来ていたんですよね。当時は何でかな、と首をひねってましたけど」

今、西吉田酒造が提唱したいのは、焼酎もワインのように食事に合わせて飲んでもらうこと。例えば、ヘビータイプの常圧蒸留のつくし黒ラベルなら甘いしょう油で味付けされた料理に、ライトタイプの減圧蒸留のつくし白ラベルなら塩であっさり味付けされた料理に合う。そんなことを、飲む人に知ってもらえれば、焼酎の楽しみ方も広がる。

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

蔵は仕込みの真っ最中

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

蔵に広がる麦由来の芳しい香りが心地よい

日本の麦焼酎と言えば「つくし」を目指す

「麦焼酎の可能性を広げるのが、僕らの使命です。麦と言えば『つくし』と思われるように、麦焼酎の味基準のど真ん中にいきたいですね」。そう吉田社長は力を込める。

焼酎、麦焼酎、つくし黒、つくし白、西吉田酒造

小ロットの設備もあって、さまざまな焼酎を研究開発中

どちらかと言えば、ライトタイプの焼酎が好まれてきた麦だけど、大賞を受賞した「つくし黒ラベル」はちょっとクセがあって、それがいい。男性にとっては女性を口説く物語もあるし、お酒好きの女性も気に入ってもらえる味だと思う。

芋焼酎に傾きつつあった自分も、小瓶だけれど、あっという間に飲み干してしまった。

西吉田酒造
http://nishiyoshida.jp
福岡県筑後市大字和泉612番地
0942-53-2229
「つくし」の黒ラベルと白ラベルはいずれも黒麹で仕込んでいる。違いは、常圧か、減圧かの蒸留方法。蔵の主力は麦焼酎だが、米、蕎麦などさまざまな原料の焼酎をつくっている。地元産の黄金千貫芋を使った芋焼酎は、その名も「呑鷹(のみたか)」。吉田さんが経営しているけど、なぜ「西吉田酒造」なのか? 答えは昔、「吉田」を名乗る蔵が二軒、隣同士にあり、その西側だったから。もう一軒はもちろん「東吉田」。一説には「北の吉田」もあったとか。

焼酎島,麦焼酎, つくし,西吉田酒造,福岡

 

 


<
>