26年もの歳月をかけた蒸留酒が3万円!
本格焼酎の日の11月1日、福岡県筑前町の焼酎専業の蔵「天盃」が1992年に蒸留して、トンネルに置いた甕(かめ)に26年寝かせた麦焼酎「天盃 いにしえ1992年蒸溜 43度」の販売予約を開始した。
720mlの4合瓶で、200本限定(シリアルナンバー入り)。
金額は32400円(税込み)。
正直、安くない?
26年もの歳月を経て出荷される麦焼酎が、3万円(税抜き)と聞いて、「安い」と正直思った。
これだけの時間がかかった商品なのに、3万円か?
2018年1月、サントリーのシングルモルトウイスキー「山崎50年」が香港のオークションで、3250万円で落札された。
世はウイスキーブーム。
国産ウイスキーは品薄が続く。
では、同じ麦が原料で同じ蒸留酒の麦焼酎はどうか。
国産ウイスキーに比べて、注目度は極めて低い。
同じくらい上質なものはたくさんあるのに、上質だと言うことがほとんど知られていない。
もったいない。
3万円の焼酎を安いと思う理由
タイム・イズ・マネーだ!
「天盃 いにしえ1992年蒸溜 43度」が、3万円で安いと思う理由の第1は、先に挙げた年月の経過。
タイム・イズ・マネーである。
この商品は、1992年10月28日、30リットルのかめに入れた麦焼酎の44度の原酒。
以来、26年にわたって、福岡県八女市黒木町の旧国鉄のトンネルで貯蔵していた。
福岡の焼酎製造会社が集まって、統一ブランドとして立ち上げたプレミアム麦焼酎「古久」の、一番最初の貯蔵酒である(今回は天盃ブランドで発売)。
だから、「古久」で、これ以上、古い貯蔵酒は、ない。
2度も蒸留している焼酎なのだ!
次に原料や製法にこだわっている点が挙げられる。
原料は、蔵のある筑紫平野で栽培された福岡・佐賀の二条大麦を使っている。
そして独自の製法が「2度の蒸留」。
普通は蒸留は1度だけなのだが、天盃では蒸留した酒を再び蒸留している。
世間に流通している焼酎に比べて手間が倍かかっているわけだ。
この2度蒸留は、ウイスキーやブランデーでは一般的な手法というが、焼酎では珍しい。
海外の優れた製法を取り入れることで、海外発の優れた蒸留酒に負けないものができるとの考えで、天盃は採用している。
日本の焼酎はウイスキーに負けていない
何度も繰り返すが、日本の本格焼酎は決してウイスキーに負けない上質な蒸留酒である。
天盃だけでなく、他の焼酎蔵も、すばらしい蒸留酒を造っている。
でも、そんなことは、あまり知られていない。
だから、ウイスキーに人気で大きく遅れを取っている。
日本人はもっと、身近なすばらしい蒸留酒に目を向けようよ。
外ばかり見るのでなく、足元のすばらしい焼酎を知ってみようよ。
11月1日の本格焼酎の日に、そう思うのである。
3万円は焼酎ファンから見ればラッキーだ!
天盃の26年ものの焼酎に話を戻そう。
需要と供給のバランスを考えた時、「天盃 いにしえ1992年蒸溜 43度」は、3万円の価格設定になったのであろう。
それでも「高い」と言う人がいるかもしれない。
ただ、ここまでコラムを読んでくれたあなたなら、分かるはず。
焼酎やウイスキーなどの蒸留酒好きなら、手間隙かかった26年ものが3万円で手に入るなんて、ラッキーなのだ。