九州焼酎島

2016/03/24

ゆったり焼酎日和 | 第14回 焼酎と桜

鹿児島に向かっている途中、車窓から斜面いっぱいに広がる山桜が目に入ってきた。何だか、ワクワクしてくる自分がいる。

この時期になると、僕は日本人だなと思う。日本の花、桜はなぜ、こうも心を揺さぶってくれるのだろうか。満開の桜を見るとうれしくなるし、散る花びらを見ると切なくなる。

1年で1~2週間の特別な時期。桜と一緒にいる時間を惜しみ、我が家では必ず花見をするのである。お弁当を作って、近所の秘密のソメイヨシノ並木へ。誰も来ない静かな場所で、鳥のさえずりを聞きながら贅沢なひと時を過ごす。

桜の花びらを眺めながら飲む酒は最高だ。「花見でおススメの焼酎って何だろう?」とよく聞かれる。そう言えば。桜の名のつく焼酎って少ないなと気づいた。日本酒は山形・出羽桜酒造の「出羽桜」など、桜にちなんだ銘柄はたくさんある。100を超える焼酎蔵がしのぎを削り、1000以上のブランドがある鹿児島なんだけど、桜の文字がつく銘柄はそんなに多くはない。

酒造名に「桜」が入った大和桜酒造の芋焼酎「大和桜」が一番に頭に浮かぶ。昔ながらの製法にこだわり、米を蒸すのも、麹をつくるのも手作業。1、2次ともにかめ壺で仕込む。なめらかな甘い口当たりと、心地良い香り。僕の知っている焼酎専門の居酒屋でも評価が高い。やっぱりお湯割りが最高だと思う。

ロックに合う味わいで仕込まれた芋焼酎「桜門」(さつま無双)。一升瓶は緑色だが、720ミリリットルのボトルは、桜の花びらをイメージさせるピンク色で、花見にぴったり。すっきりと、さわやかな味わいなので、真っ青な空の下で楽しんでみたい。

この時期は花冷えと言われるように、肌寒い日もある。そんなときには焼酎のお湯割りかな。日差しの強い暖かな日はロックもいいな。そんなことを考えていたら、あと少しなのに、満開の桜が待ち遠しい。

(渡邊精二)


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