九州焼酎島

2016/03/14

ゆったり焼酎日和 | 第13回 焼酎とオーガニック

「オーガニック」という言葉に惹かれる。農薬、化学肥料に頼らずに、有機農業で育てた作物に惹かれるのである。

僕はオーガニック野菜だから、うまいとは、思っていない。農薬を使っていても、うまい野菜はうまい。ただ、オーガニックは、農薬や科学肥料を使っている野菜に比べて、人体にも、自然環境にも優しいと思っている。だから、応援したい。

有機農業は大変だ。雑草というやつは、放っておくと、ものすごい勢いで野菜を覆い隠す。除草剤を使いたくなかったら、コツコツと草取りをする必要がある。広大な畑だったら、気が遠くなりそうな作業だ。作物には、青虫などの虫が付く。放っておくと、あっと言う間に葉っぱを食い荒らされる。薬で撃退したくなかったら、虫を一つひとつ取る必要がある。虫よけの対策もしなければならない。

オーガニックの作物を育てるには、とにかく手間暇がかかる。少人数ではたくさんの作物を生産できない。だから、有機野菜は値段が少々高い。僕の近所のおじいちゃんたちは、昔ながらの農家だから、「農薬を使わないと農業はできない」という。「本当に無農薬でやっている農家なんているのか?」と逆に質問される。育てる作物にもよるが、確かに大量生産するには、オーガニックは労力がかかる。

ただ、そのおじいちゃんに聞くと、自宅用の野菜には薬を使わないという。「自分で食べるものは消毒せんよ」と。消費者にはやるせない話だが、農家自身が農薬についてはよく知っている。

焼酎の世界でも、オーガニックの材料を使う蔵が増えている。消費者に安全な飲み物を届けようという、心意気だととらえている。

オーガニック認定米で造る熊本・豊永酒造の米焼酎「豊永蔵」、「甕雫」で知られる宮崎・京屋酒造は、自社農園で無農薬のさつま芋や合鴨米を生産し、商品に使用。鹿児島・小正醸造は有機栽培のコガネセンガンとヒノヒカリを使い、有機芋焼酎「天地水楽」を製造している。

手間がかかっても、価格が高くなっても、原材料にはこだわる。大量生産、大量消費の時代だからこそ、こういった蔵の心意気を応援したくなるのである。

(渡邊精二)


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