九州焼酎島

2016/02/12

蔵元探訪 | 蔵元探訪 さつま無双株式会社

うまい焼酎には、幾つものこだわりを持った造り手たちがいた。

 

鹿児島のシンボル、桜島を望む錦江湾沿いにある「さつま無双株式会社」。敷地に入ると、大きな木製の水槽が目に飛び込んでくる。抗菌性に優れ、焼酎造りに欠かせないまろやかでうまい水を造るという。ここに、薩摩の自然の湧き水をいれてれいる。いきなり水へのこだわりを見つけた。

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「うちのこだわりは、仕込み。カメで仕込み、木樽で蒸留します。木樽はステンレス製の蒸留機と較べて、香りがぜんぜん違うんです」。企画部長の久木原利英さんが説明してくれた。

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さつま無双の焼酎は、ほとんどが芋だ。敷地内にあるグループ会社の三和酒造でも、さつま無双の銘柄に使う焼酎をつくっている。作業場はとても清潔に保たれ、仕込み用のカメ壺が埋まっている。蒸留機は杉の木を使い、鹿児島で唯一の職人の手で作られた匠の一品。鹿児島の酒造会社113社の中で11社にしかないという。その蒸留機によって抽生み出されるた原酒は、芋本来の甘みとまろやかな味を多く含んでいる。

 

久木原さんは「他社さんとの違いを出すと言えば、昔からのブレンド技術と濾過の技術。それがうちの売りです。とても飲みやすさく、口当たりの良い焼酎が提供できます」と胸を張る。

 

ウイスキーと同じように、焼酎もブレンドを行うのが一般的だ。単体では荒々しい味の酒も、数種の原酒を掛け合わせることで、2倍も3倍も飲みやすく、うまい一杯になる。

 

さつま無双の焼酎ブレンダーが工場長の松元太さんだ。彼の舌が店に並ぶ商品の味を決める。「違うタイプの焼酎を混ぜ合わせると、風味の幅が広がるんです」。銘柄によって、原酒のブレンドの比率は決まっている。しかし、熟成具合や芋の質などによって原酒の状態も、毎回のように違う。そこを微調整して、いつもの味に仕上げられるかが、腕の見せどころだ。

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ブレンダー歴10年。「五感をつかう仕事なので、とにかく健康には気をつけています」。自己管理には厳しい。朝晩20~30分の散歩、週一回1時間のジョギングをしている。味覚にいいと聞いた「亜鉛」のサプリメントを服用していたこともある。

 

実は「酒は弱い」。しかし、弱いからこそ、アルコールの味には敏感だ。「静かな環境に身を置き、“空腹感のある味に敏感な時間帯”にブレンドします」。舌先まで神経を研ぎ澄まし、気持ちを落ち着かせる。真剣勝負の時間だ。「うまかった、とお客様に飲んでもらいたい」。目指すのは、口に含んだとたん、さっと消えていくような酒という。「いいチョコレートは、口の中に入れるとスッと消えていくでしょう。そんな感じの焼酎が理想なんです」

 

そんなこだわりの職人たちによって、生み出される商品はバラエティーに飛んでいる。「100%、万人に受けるものはないですから。一般の人にアンケートを取ると、口当たりがいい、飲みやすい、芋臭くない焼酎が上位に来るんですが、コアなファンは芋臭いのが好き。メーカーとしては、いろんな方向を向いていないといけないんです」と久木原さん。さつま無双の銘柄でおすすめを三つだけ上げてもらった。

 

まずは「天無双」。鹿児島限定の一品だ。原料の芋はコガネセンガンを使用。カメ壷で仕込まれ、木樽で蒸留。その原酒を素焼きのカメ壷で貯蔵、熟成している。松元さんは「優しい芋の香りと木樽で蒸留されたいい香り。そして、何と言っても味の濃さ。濃いとは言っても、飲みくちはいいんです」と話す。

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次に上げてくれたのは、「もぐら」。全国の正規特約店で販売している。これもコガネセンガンを使用。芋の良さを生かすために、旨味成分をぎりぎりまで多く残してつくっている。長く寝かせるために、もぐら専用のタンクを設置。泡盛の古酒と同じように、減った分を継ぎ足している。「熟成感とバランスの良さがいい」と松本さんは評価。久木原さんも「私は口に含んだ時に辛く感じる焼酎があるんですが、もぐらに関しては全くない。口に含んだ後、鼻に抜けていく風味が最高です」と太鼓判を押す。

 

最後は定番商品の「さつま無双赤ラベル」。三つの原酒をブレンドし、多くの焼酎好きに飲みやすさ支持される自慢の一品だ。松元さんは「焼酎の優等生」と自信を持っておすすめする。

 

最近は若者の酒離れが進んでいるという。そんな時代だからこそ、2人は焼酎を多くの人に広めたいと思う。

 

久木原さんは「鹿児島では昔からダレヤメ(晩酌)と言って、一日を一生懸命頑張ったあと、焼酎で晩酌して気持ちを落ち着けさせる。それが明日への活力になる。焼酎には辛いことがあっても、それを和らげてくれる力がある。そして、明日からまた頑張ろうと思わせてくれるんです」と熱く語る。

 

松元さんも、手塩にかけて育てた酒をたくさんの人に飲んでほしいと願う。「今は食費よりもスマートフォンなどの機械に顔を向ける人が多い。人間関係が希薄になっていると感じます。そんな方たちに知ってほしい。お酒は人と人との人間関係をつくってくれる素晴らしい道具なんです」


さつま無双株式会社

http://www.satsumamusou.co.jp

住所:鹿児島市七ツ島1-1-17

電話:099-261-8555

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昭和41年、県、市、各機関の「焼酎を全国に広めて」との要望から、県酒造協同組合傘下の各業者の協力でできた。銘柄でもある会社名は「さつまにふたつとない」との意味を持ち、県民から一般公募した名だ。敷地内の「無双蔵」では、県内各蔵元の焼酎を販売。他では手に入らない無双蔵限定商品もある。


 


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