九州焼酎島

2016/05/20

ゆったり焼酎日和 | 第17回 焼酎と熊本地震

巻誠一郎選手の生の声を久しぶりに聞いた。

巻選手はサッカー元日本代表FWで、現在は故郷のJ2ロアッソ熊本でプレーしている。熊本地震では発生当初から、全国に被災地支援を呼びかけ、自ら救援物資を避難所に届けるなどの活動を続けている。

先日、鹿児島市で開催されたFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)、LINE(ライン)など、SNSの災害時の有効活用を話し合うセミナーに、テレビ電話でゲスト出演。「被災地の情報を発信し続けたい」と意欲を語っていた。

彼は、2006年のドイツ・ワールドカップ(W杯)で、サプライズで日本代表に選出されたことが記憶に残る。当時は現在J2のジェフユナイテッド千葉に所属し、のちに日本代表監督になったイビチャ・オシム監督の指導を受けていた。

僕はサッカー記者をしていたことがある。巻選手の印象は決して足技がうまいわけではないが、がむしゃらでひたむき。ゴールしか興味のない、エゴイストの多いポジションのFWで、守備もする。味方にゴールしてもらうために、184センチの体を張って、ゴール前の潰れ役もいとわない。味方のために辛い作業も嫌がらず、とにかく「走るFW」だった。

そんな姿を知っているものだから、出身地の熊本で被災者のために走り回る彼の姿を見て思った。「ピッチを離れても、巻誠一郎は巻誠一郎なんだな」と。

巻選手がプレーするロアッソ熊本のユニホーム前面には、本格米焼酎の「白岳」の名前が書いてある。製造元の高橋酒造がスポンサーなのだ。熊本の焼酎と言えば、米焼酎。「球磨焼酎」の呼称で有名だ。今回の熊本地震では、幸いなことに、大きな被害を受けた球磨焼酎の蔵はないようだ。ただ、商品の輸送は、まだまだ不便。焼酎を卸す熊本の飲食店も苦戦しているところが多いことだろう。観光客が激減している状況なのだから。

工場自体に被害が少なかったからと言って、地震の影響は流通・販売などいろんなところで出てくる。熊本の経済を含めた復興支援のために、九州焼酎島として何かできることはないか。そう思って、普段はもっぱら芋焼酎の僕は、球磨焼酎を飲むことにした。

僕は仕事もあるから被災地に足を運ぶことはできないけれども、熊本のメーカーの商品を買うことはできる。それが、熊本の経済を助けることになるのであれば、協力したい。世の焼酎党のみなさまにも、熊本の本格米焼酎を飲む、という熊本支援の選択肢を入れてもらえたら、と願う。

(渡邊精二)


<
>