九州焼酎島

2016/06/23

ゆったり焼酎日和 | 第18回 焼酎と黒酢

焼酎を造っている酒蔵のほか、醤油・味噌を製造している工場、黒酢の仕込み場と、さまざまな場所で撮影・取材をしている。すべての現場に共通しているのは、麹(こうじ)である。

カメラを構え、粉状に飛び散る麹菌を浴びまくったおかげで、一般の人よりも、麹に詳しくなってしまった。知れば、知るほど、日本の発酵食品に欠かすことができない麹のすごさに驚かされる。

麹って、簡単に言えば「カビ」だ。カビと言っても、今の梅雨時に嫌われるものではない。デンプンやタンパク質を分解して、おいしい発酵食品をつくってくれる。麹を発見した人って、ノーベル賞ものじゃないかな、と思わずにはいられない。麹がなければ、日本の食文化もこれほど豊かにならなかっただろう。

代表的な麹菌と言ったら、黄麹で、醤油、味噌、酢、日本酒などに広く使われる。焼酎で使用するのは黄麹だけでなく、白麹、黒麹とバラエティー豊かである。多彩な麹に、原料も芋、麦、米など限りはない。焼酎って、すごいじゃないか。何と無限の可能性を秘めたお酒なんだ、と思うのは、僕だけだろうか?

そんな無限の焼酎に、黒酢焼酎「黒酢のお酒」が発売された。何ともチャレンジャーだなと思っていたら、やはり小正醸造だった。“ノンアルコール芋焼酎”を発売している、鹿児島の焼酎メーカーだ。黒酢は総業200年超の老舗・坂元醸造。黒麹で製造した芋焼酎リキュールと、黄麹でつくった黒酢のコラボ商品である。

黒酢の焼酎と聞いて、正直、「誰が飲むの?」と疑問だった。焼酎は焼酎、黒酢は黒酢で分けて飲んだほうがいいんじゃない、と。それが、意外やコンスタントに売れているらしい。

甘みがついているので、梅酒のような食前酒としていい。酸味があるから、暑くなってくる、これからの時期にぴったりで、すっきりと飲みやすい。

黒酢は健康に良いと注目を浴びているし、鹿児島の二つの銘産品を一気に味わえてお得かも。そんなことを考えると、焼酎って、本当に可能性が無限大。今度はどんな焼酎が生まれるのか、楽しみになってくる。

(渡邊精二)


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