九州焼酎島

2016/11/10

蔵元探訪 | 蔵元探訪 小正醸造日置蒸溜蔵(鹿児島県日置市)

焼酎界の挑戦者

日本初の樫樽貯蔵焼酎に、

驚きの業界初、“ノンアルコール芋焼酎”!

薩摩半島西部の鹿児島県日置市は、雄大な東シナ海が広がり、サーファーたちが波乗りを楽しんでいる。海岸から少し内陸に入り、田畑の広がる田舎ののどかな風景を眺めていると、小正醸造の日置蒸溜蔵に到着する。

小正醸造の蔵には大きなタンクが並んでいる

小正醸造の蔵には大きなタンクが並んでいる

敷地内には大きな焼酎の貯蔵タンクが並ぶ。訪問した10月下旬は、収穫したばかりの芋の焼酎の仕込みが始まっており、蒸した芋の甘い香りがぷーんと漂い、鼻の中を抜けていった。

小鶴くろ、赤猿、黄猿などアイテム数は200超!

小正醸造は現代的な機械を設備し、大量生産が可能な工場と、かめ壺仕込みに木樽蒸留という昔ながらの手づくりにこだわる「師魂蔵」で、焼酎造りを行っている。「こまさ」と聞いて思い浮かべるのは、代表銘柄の「小鶴」ブランドや、赤猿、黄猿、白猿、黒猿といった「猿シリーズ」。でも、製造している銘柄は驚くほど多い。プライベートブランドを含めると実に200超のアイテムをつくっているという。

昔ながらのかめ壺仕込みの蔵

昔ながらのかめ壺仕込みの師魂蔵

小正醸造について、いつも思っていることがあった。「焼酎業界のチャレンジャー」だな、と。創業は明治16年(1883年)と古いけれど、常に新しいことに挑戦し続けているように感じる。

本格焼酎の樫樽貯蔵の先駆け、メローコヅル

今でこそ、多くの焼酎蔵で行われている樫樽貯蔵は、米焼酎「メローコヅル」が、ウイスキーを参考にして、日本で初めて取り入れた手法だ。芳醇な香りとうま味がある「メローコヅル」は2017年で60周年を迎えるという。

日本初、樫樽貯蔵の米焼酎「メローコヅル」の貯蔵庫

日本初、樫樽貯蔵の米焼酎「メローコヅル」の貯蔵庫

最近では、“ノンアルコール芋焼酎”を本格焼酎業界で初めて販売。その「小鶴ZERO」は、意外や中東で料理用に大量発注があるとか。鹿児島銘産の福山黒酢とコラボした「黒酢のお酒」や、ワイン酵母を使った麦焼酎「白猿」など、業界でも珍しい焼酎づくりに挑んでいる。

試行錯誤の毎日から新しい味が生まれる

「正直、とまどうことも多いですよ」。研究開発室・品質管理室の統括室長、枇榔(びろう)誠さんは苦笑いする。新しい焼酎をつくるということは、お手本になるものがほとんどない。だから、試行錯誤を重ねる必要がある。産みの苦しみがあるということか。

枇榔さん(左)と笠野さん

枇榔さん(左)と笠野さん

契約農家のこだわりの芋を使用

ただ、当然のことながら小正醸造は珍しい焼酎づくりだけに取り組んでいるわけではない。鹿児島と言えば、芋焼酎。原料の芋にこだわり、蔵のある日置市周辺の農家にさまざまな種類のものを栽培してもらっている。

収穫された黄金千貫芋。大きい!

収穫された黄金千貫芋。大きい!

幻の芋、農林2号は芋焼酎「薩摩維新」になる。

幻の芋、農林2号は芋焼酎「薩摩維新」になる。

農家の芋は小正スタッフが5段階評価

杜氏の笠野美好さんは小正醸造が使う芋について、こう説明する。

「すべて生産農家の顔が見える芋を使っています。芋の選別作業場には、農家の顔写真を貼っていて、作業スタッフが5段階の芋の評価をつけるんです。農家としても適当なものはつくれないし、栽培に力が入りますよね。そんな農家の力作の芋を、小正醸造では使用しているのです」

芋農家からも、叱咤激励の言葉

芋の生産者、東馬場伸さん。紅芋は「赤猿」になる。

芋の生産者、東馬場伸さん。紅芋は「赤猿」になる。

逆に農家から「飲み屋に入ったら、小正醸造の焼酎が置いてなかったぞ。しっかりせんか」とお叱りの言葉を受けることもあるという。笠野さんは「小正醸造に愛情を持って芋をつくってもらっているから、われわれとしても、適当な焼酎は造れないし、お店に置いてもらえるように頑張らないといけないんです」と話す。

農家が丹精込めて育てた芋は、鹿児島では唯一の横型の蒸留器と、昔ながらの木樽蒸留器を使って、うまい焼酎に生まれ変わる。

鹿児島唯一の横型蒸留器

鹿児島唯一の横型蒸留器

伝統と革新の焼酎蔵

枇榔さんと、笠野さんに小正醸造のお気に入りを聞いた。枇榔さんは紫芋を使った「赤猿」を好むという。「のみやすくて、アルコールが苦手な私でもスイスイ入る」。笠野さんの晩酌のお伴は「小鶴くろ」だ。「切れがあって、ふわったした口当たり。体がほっとするんです」。

枇榔さん(左)と杜氏の笠野さん

木樽蒸留器を前に、枇榔さん(左)と笠野さん

やはり、定番の焼酎は、体が心地よく感じるのだろう。

昔ながらの銘柄を大事にしつつも、赤猿など常に新しい焼酎の味を追い求める。「伝統と革新」。小正醸造は、そんな焼酎蔵だった。

小正醸造日置蒸溜蔵

http://www.komasa.co.jp/

住所:鹿児島県日置市日吉町日置3309

電話:0120-014-469

敷地内には直売所「こまさや」があり、小正醸造のさまざまな銘柄を販売。試飲もできる。


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