九州焼酎島

2016/03/07

ゆったり焼酎日和 | 第12回 焼酎と鹿児島の甘さ

最近、関東から仕入れた味噌で味噌汁を作っていると、5歳の息子が「おいしくない」と飲みたがらない。東京生まれだが、育ちは福岡。九州の甘めの味噌に戻すと、「おいしい」と笑顔が戻った。

そういえば、鹿児島は甘い。衝撃的な、甘さだ。

何が甘いって、調味料が甘い。東京出身の知人が九州の醤油は甘すぎると言う。その九州・福岡出身の僕でさえ、鹿児島の醤油の甘さは、ちょっとレベルが違うと感じる。さつま島美人のふる里、長島でアラカブ定食を食べた時の、刺身醤油の甘さは本当にびっくり。全体的な料理の味付けも濃厚で甘めに感じる。

でも、甘さがだんだんとクセになるという。鹿児島に長く赴任した方に聞くと、離れた時に甘い味が恋しくなるのだとか。うちの息子も、同じような気持ちだったのかな。

鹿児島の衝撃的な甘さも、芋焼酎を飲むと、不思議と和らぐ。芋の甘い香りと風味。豚の角煮やさつま揚げといった、薩摩の濃厚な味に打ち負けない酒は、やっぱり芋焼酎だと思う。

焼酎人に登場していただいた東京・新丸ビルの蒸し料理専門店、ムスムスの今田篤子さんも同じような話をしていた。今田さんが豚肉料理店に勤めていた時に、角煮など濃厚な豚料理に合う酒を探して、いろんなアルコールを飲み比べたという。「日本酒だとおいしくない。ウイスキーは今ひとつ。やっぱり芋焼酎が一番おいしかった」。彼女の話を聞いて、豚の生産量日本一の鹿児島と、芋焼酎の相性の良さを実感した。地域の食と酒はつながっているんだな、と。

甘くて濃厚な味付けには、芋焼酎が一番だ。甘い醤油で豚のバラ肉をとろとろ煮込んだ角煮は、芋焼酎の肴にぴったりである。最近お気に入りの「鹿児島藩」のお湯割りを飲みながら、口に放り込んだ時の至福の瞬間。思わず、頬が緩む。そんな時、だんだんと、鹿児島の食に順応している自分に気づくのである。

(渡邊精二)


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