九州焼酎島

焼酎人
山中知広さん

「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。
~ 第1回本格焼酎カクテルコンテスト・グランプリ 山中知広さん ~

大好きな本格焼酎の良さを、たくさんの人に知ってもらいたい、と活動する人たちがいる。
世界に向けて焼酎を発信する人。大学で焼酎を学び、同世代の女性に広めている人。
こだわりの焼酎を造っている人。そんな「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。

「ショコラ・ドゥ・アムール」

グランプリを受賞したカクテルの名前は、「ショコラ・ドゥ・アムール」。日本語で「チョコレートを愛する女の子」という意味です。第1回本格焼酎カクテルコンテストに挑戦することを決めた時、頭に思い浮かんだイメージを再現しました。黒糖焼酎の朝日(朝日酒造)の30度、GODIVAチョコレートリキュール、アマレットリキュール、生クリームでつくったカクテル。グラスのふちに、粉末状にしたかりんとうをつけています。少しビターな大人のデザートカクテルです。

本格焼酎を使ったカクテルって、あまりないんですよ。

本格焼酎を使ったカクテルって、あまりないんですよ。だけど、僕は鹿児島出身ですので、焼酎のカクテルには、これまでも挑戦してきました。芋焼酎では、いくつか自分のオリジナルは持っています。ただ黒糖焼酎でオリジナルのカクテルを作ったことはなかったので、今回挑戦してみようと思ったんです。

「女性がときめく本格焼酎カクテル」

コンテストのテーマが「女性がときめく本格焼酎カクテル」ということだったので、黒糖焼酎を使ったクリーム系のカクテル、というイメージがすぐに浮かんだんです。あとは、女性がときめくスイーツといえば、チョコレートかな、と。黒糖焼酎と生クリーム、チョコレートリキュール。これだけで、十分おいしいんですけど、ちょっと面白みがないなと感じて。飲んだ後にチョコレートや黒糖の甘みだけじゃなくて、もう一つアクセントのようなものが残らないかな、と思って。

10種類ぐらいのリキュールを試したら、アマレット(アンズのリキュール)が良かった。杏仁豆腐のような香りが特長のアマレットを使うと、飲んだ後にアンズの味わいが少し残って、後味に華やかさが出たんです。

バーテンダー歴20年で初めて

肝心の黒糖焼酎は、5銘柄を試しました。喜界島の朝日は、荒削りというか、個性的な味わいが強い黒糖焼酎です。カクテルにしても、黒糖の味わいが残っていたので、「これだ!」と。他に試したのは、飲みやすいクセのない黒糖焼酎だったので、カクテルにすると、他のリキュールに味も香りも飲み込まれ、負けてしまったんです。芋焼酎も同じなんですけど、飲みやすいものは、他のリキュールと混ぜると、どうしても埋没してしまう。その点、朝日は骨太というか、芯のある、コシのある焼酎で、カクテルにしても負けない。焼酎ベースのカクテルは、やはり焼酎が生きないといけないです。もちろん焼酎があんまり強すぎてもいけませんし、弱すぎても駄目。調度良いバランスって、難しいんです。だから、カクテルの大会で本格焼酎を使ったのは、バーテンダー歴20年で初めてでした。

ダラダラまったり飲みたい時は焼酎。

バーテンダーの世界には、22歳で入りました。バーでは洋酒を扱っていますが、僕は鹿児島生まれの鹿児島育ちですので、個人的には焼酎を飲みますよ。やっぱり芋焼酎ですね。友達と一席設けるときも、焼酎ですね。ざっくばらんに、仲間と注ぎ合って、気楽に飲める酒。そこが焼酎の良さですよね。晩酌もしますよ。その場の気分で焼酎と洋酒を飲み分けます。ダラダラまったり飲みたい時は焼酎。すぐに寝たいときは、アルコール度数の強いウイスキーをくっと一杯体に入れます。

こだわりがないのが、焼酎のいいところ。

最近飲んでる焼酎ですか? 三岳(三岳酒造)がうちにあります。あと、本坊酒造さんの「あらわざ桜島」はおいしいですね。飲み方は、ロック。グラスに氷を入れて、よくかき混ぜて、しっかり冷やしてから注ぐ。晩酌でも、お客様に出すような作業は、自然とやっていますね。職業病ですかね(笑)。ただ、こだわって、つくっているわけでもないんです。こだわりがないのが、焼酎のいいところ。気取らなくていいお酒じゃないですか。

まずは飲んでもらいたい

焼酎の造り手さんは複雑かもしれませんけど、まずは飲んでもらわないと。飲んでもらいたいということに関しては、造り手さんも、メーカーさんも、僕らお酒を提供する側も一致している意見なので。本格焼酎の提供の仕方、飲み方を、いろんな方に広めることは、僕らバーテンダーもできる仕事だと思います。第2回のコンテストがあれば、芋焼酎をベースにカクテルを作ってみます。ほのかに、芋の香りが出て、味わいがあって、果実味が出て。そんなカクテルの完成形のイメージは、もう頭の中にできているんです。


プロフィール

山中知広さん

1974年、鹿児島市生まれ。鹿児島の老舗バー「ハイブリッジ」の店長。大学生の22歳の時、ハイブリッジでバーテンダーの道を歩み始め、酒の面白さ、接客の面白さにハマって20年が過ぎる。約700種の世界の酒をそろえるバーでは、自分の好きな酒を頼むも良し、バーテンダーのおススメのカクテルを作ってもらうのも良し。高い背もたれのいすに腰掛けて、ゆったりとした大人の空間を楽しめる。