九州焼酎島

焼酎人
森万由子(もり・まゆこ)さん

「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。
~ 初代ミス薩摩焼酎 森万由子(もり・まゆこ)さん ~

大好きな本格焼酎の良さを、たくさんの人に知ってもらいたい、と活動する人たちがいる。
世界に向けて焼酎を発信する人。大学で焼酎を学び、同世代の女性に広めている人。
こだわりの焼酎を造っている人。そんな「伝え人」たちが、焼酎の魅力を語る。

幼いころの楽しい思い出の中には、いつも焼酎があった気がする

私の焼酎の思い出って、おばあちゃんの家なんです。親戚ぐるみで仲が良くて、週末になると、おばあちゃんのところに集まるんです。50人ぐらいで夕食を取ったりするんですよ。小さな町なので、町中から人が集まってくる感じですよね。

おばあちゃん家への手土産は焼酎です。天気の良い夜は、歩いて50メートルの海辺へ。シートを引いて、大人たちが楽しそうに焼酎を飲んでいるところに、私も混ざって食事をしていました。当時は子供だから飲めなかったですけど、幼いころの楽しい思い出の中には、いつも焼酎があった気がするな、って思うんですよ。

おばあちゃんの家は、白玉醸造の近くなので、「白玉の露」をみんなで飲んでいましたね。「魔王」ですか? 仏壇に飾られていました(笑)。岩川醸造も、そんなに離れていないので「おやっとさぁ」も出てきましたね。

20歳の誕生日にはじめて飲みました。

ずっと口にしてみたかった焼酎は、20歳の誕生日にはじめて飲みました。「紫の赤兎馬」(濱田酒造)です。なぜかって? アルバイトの観光ガイドで、あこがれている先輩が紫の赤兎馬が好きだったんです。焼酎文化が好きで北海道から鹿児島に移住されてきた先輩が「おいしい」って言われていたので、お湯割りで飲んでみました。はじめての焼酎は正直、今ほどおいしさはわかりませんでしたね。酔いの方が先にきまして。

焼酎は鹿児島の強みなんだな、って実感する

観光ガイドは「薩摩こんしぇるじゅ。」と言います。ミス薩摩焼酎に応募する、一つのきっかけにもなったんです。お客様を天文館や神社など観光地に案内して、最後は居酒屋へ。黒じょかで焼酎を飲んでいただくんです。観光地では歴史の堅い話を緊張した様子で聞かれているお客様も多いんですが、焼酎を飲まれたら、一気に打ち解けて、楽しい会話になるんです。そんな瞬間がすごく嬉しくて。焼酎は鹿児島の強みなんだな、って実感するんですよね。

お客様からは「おみやげに焼酎を買って行きたいから、一緒に選びに行こうよ」って誘っていただけるんです。ただ、おススメの焼酎を聞かれた時に、思ったように答えられない自分がいて。ガイドになったのは19歳。まだ飲めない年齢だったんです。これがいいですよ、とはっきり言えないことが、自分の中で仕事を全うできてないな、という悔しさになっていて。それで焼酎のことを勉強するようになってから、ミス薩摩焼酎の募集のことを教えてもらったんです。

ダレヤメには、やっぱりお湯割りがいいですね

いろんな方から焼酎のことを教えていただいたおかげで、ミス薩摩焼酎になれたんです。副賞で本格焼酎1年分もいただき、毎晩晩酌をしています。私はお酒をみんなで楽しんで飲むタイプだったんですけど、焼酎は1人で飲んでも、楽しめるお酒なんだな、とわかりました。香りを楽しんで、ゆっくり飲んで、その日の疲れを癒やすんです。

鹿児島では晩酌のことを「ダレヤメ」(疲れをとるという意味)と言います。最近、ダレヤメの良さに気づき始めたんです。まだ20歳で、そんなに疲れないでしょうって? でも、ミス薩摩焼酎になって履きなれないヒールで疲れて帰宅した時、焼酎は本当に体に染み入るんですよ(笑)。ダレヤメには、やっぱりお湯割りがいいですね。焼酎を勉強したなかで、お湯割りが一番リラックス効果があると聞いたので、意識してます。

お湯割りは、鹿児島県外で薩摩焼酎のPRする時に、飲み方として浸透していないなと感じているんですよ。だから、飲み方も含めて、焼酎の魅力をお伝えしたいと活動しています。「こんなにおいしいんだ」と、お客様に美味しさが伝わった瞬間は、すごくやりがいを感じますね。

20歳の学生の私が、ミス薩摩焼酎に選ばれた理由

若者の酒離れですか? 幸いなことに私の友達は、お酒を飲みます。大学のサークルでバンドに入っているんですけど、私がミス薩摩焼酎になったことで、バンド仲間も飲み会で率先して焼酎を飲んでくれるようになったんです。焼酎はボトルでキープして、みんなで飲んだ方が安いですから。

飲み会に参加しないから、お酒が怖いものだと思うんじゃないかな。学生の飲み会は、無理やり飲まされるイメージもあるので。でも、飲めない方は、無理に飲む必要はないですよ。コミュニケーションの場として、その場にいるだけで楽しめると思うんです。お酒にはアルコール度数が低いものあるし、焼酎ならお湯割りにもできるし、水割りにもできます。いろんな飲み方が楽しめます。20歳の学生の私が、ミス薩摩焼酎に選ばれた理由の中には、若い方にお酒の楽しさを伝えていく役割もあるんじゃないかなと思っているんです。


プロフィール

森万由子(もり・まゆこ)さん

1995年生まれ。鹿児島市出身。鹿児島大学法文学部で、マスコミなどの勉強中。特技は書道で、ことしの書き初めは「故郷」。旅行や登山も好き。