宮崎県都城市に「BAR aria(バー・アリア)」はある。マスターには失礼だが、お客がそんなにいないのが気に入っている。ゆっくりくつろげるのだ(店の名誉のために付け加えておくと、にぎわっている日も結構あるらしい)。
ここのバーは他にはない、ちょっと変わり種のカクテルを出してくれる。今の季節なら、温かいスープのカクテルか。これが美味しい。温かいし、「ミルキーランド」(南日本酪農協同株式会社)という地元の乳業メーカーがつくった、国産唯一のクリームリキュールが入っているから、ほどよく酔える。寒い日には、ぴったりだ。
マスターの発想は豊かだ。ジントニックにセロリを入れたり、新しいお酒の飲み方を発見させてくれる。だから楽しい。アリアに行くまで僕の頭の中には、温かいカクテルなんてなかった。大半のお客さんも同じようで、おすすめでスープカクテルを提案すると、びっくりされるという。マスターは常に新しいお酒の提案の仕方を模索していて、僕は共感が持てるのだ。
都城市といえば焼酎界の巨人、霧島酒造の本拠地。街の飲食店には、黒霧島、白霧島、赤霧島、茜霧島など、霧島酒造の焼酎があふれている。焼酎はお湯割り、水割り、ストレートといろんな飲み方を自由に楽しめるのが魅力。そう言えば、カクテルという概念はあまりなかったな、とふと思った。
昔ながらの焼酎党の人に聞くと「焼酎をカクテルにするなんて邪道」という声も多い。でも、僕はいいじゃない、と思う。
若い人の酒離れが進んでいる。既成概念にとらわれず、例えば焼酎をスープにしてみても、焼酎にセロリを入れてみてもいいのではないか、と思うわけである。それで美味しかったら、焼酎の可能性が広がるし、何よりも新たなお酒の飲み方に出会えて楽しいじゃないか。全国各地で、その土地に合ったいろんな焼酎の飲み方が生まれたら、面白いんじゃないか。
アリアはバーだから焼酎は置いていないけれど、マスターの挑戦する姿勢を見ていて、焼酎もどんどん挑戦しようぜ、と思う。
焼酎は自由な酒なんだから、自由な発想で楽しもうぜ、と思うわけである。
(渡邊精二)