九州焼酎島

2016/04/15

ゆったり焼酎日和 | 第16回 焼酎とノンアルコール

先日、鹿児島で珍しいものを見つけた。何と、“ノンアルコール芋焼酎”である。

その名も「小鶴ZERO」(コヅルゼロ)。「小鶴」や「赤猿」「黄猿」などで知られる小正醸造(鹿児島県日置市)が開発した、本格焼酎業界初という“ノンアルコール焼酎”だ。正確には、「芋焼酎テイスト飲料」だそう。アルコールも、糖質も、カロリーも「ゼロ」というのが売りである。

ノンアルコールビールは、既に市民権を得ている。技術革新で昔に比べると、ビールっぽくなってきたという話を聞くが、僕にはなんだか物足りない。さて、「小鶴ZERO」はいかがなものか。

よく冷やして飲んで下さいというので、大きな氷の入ったグラスに注いでみた。まず、強烈な芋の香りに驚く。最近の芋焼酎にもないような、強い香り。小正醸造によると、黄金千貫の香りを封じ込めてあるそう。

口に含んでみる。不思議なことに、あれほど強烈だった香りは全く気にならない。芋の甘みも口に広がる。簡単に言うと、「芋の味がする水」か。アルコールの入っている芋焼酎とは別物だ。一緒に飲んだ女性の間では「おいしい」という声も聞かれた。アルコールが苦手な人は、芋焼酎を飲んでいる気分を味わうのにいいそうだ。

気になる方は、ぜひとも試してほしい。大勢で飲んでいると、「あーだ、こーだ」といろんな感想が飛び交って、面白かった。話のネタとしてもいい飲み物である。

実は「小鶴ZERO」は海外にも輸出されている。アラブ首長国連邦のドバイ。アルコールがご法度なイスラム圏で、調味料として使われたりするそうだ。

昔かたぎの職人も多い本格焼酎業界で、ノンアルコールの商品は邪道という人もいるかもしれない。そんな中で小正醸造は、明治16年創業と歴史も古い会社なのに、チャレンジ精神があるな、と思う。

ノンアルコールビールだって、最初は邪道と言う人が多かったんだから、もしかしたら“ノンアルコール焼酎”も、飲み屋に定着するかもしれない。何がヒットするのか、分からない世の中だからこそ、「まずやってみる」という言葉の大切さを実感する。

(渡邊精二)


<
>